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コズミック・ドライブ(彗星のコラージュ・ロマン)
コズミック・ドライブ それは白昼夢の謂でしょうか 此の世の涯て 何処へとも知れぬ無窮の彼方めがけて 軽やかな時の経過の中 瞬時速度とベクトルを変えながら しかも淡々と進んでゆく 彗星のコズミックドライブです またはフェアリーテールでもありましょうか 渦巻く現象世界をさわやかに駆けてゆく オレンジ色の足の裏を持つ少年達の華やかな笑い声 青き惑星テラを遠い記憶と偲ばせて ライラック色の時はつまずきながら 青い孤独な惑星の上方で 曖昧な事象のつらなりを眺め ライラック色の時はつまずきながら もう随分永いことひっそりと時を刻んでいる すれば世界はあざやかに この漠然とした大海のひとつの泡沫にすぎない結晶体が 跡形もなくすみやかに消えてゆき... すれば世界はあざやかに たとえようもなくあでやかに息づき 森閑とした瑠璃色の大気は色づき もうそこら中に染みわたり光の饗宴を繰り展げている 君のやり方に応えて そんな君のやり方が気に入っている訳ではないが 文句を言って時間を潰すのもいやなので 結局にこやかに微笑むしかできないのだよ ... とクールな観察者が呟いた そんな能書きはもう沢山だから そろそろ街へ出かけてみたらどうなんだい 夜風もひんやり気持ちがいいし 月も出ている頃だから ... と審美家が囁いた ごらん!この空気のふくらみよう このひろやかさ! と密かに神秘家が耳打ちした レイチェルのギターの弾き方について レイチェルのギターの弾き方といえば それはもうシンプルこの上なく 黄昏色のゼロ地帯 惑星地球の零時のやり方です またワイルド(野性的)と呼べないこともない なぜならメロディーやリズムには頓とお構いなく ただ純粋にサウンドそのものの連なりなのですから つまり ... (私がギターを弾く時? そうね 何と言ったらいいのかしら 私は別に何かを感じたり 弾きたいフレーズを持っている訳ではないの 先ずそこに音があるのよ その音を観ているっていう感じかしら 私は耳を凝らしてそれをもっとよく聴こうとしているの そうすると最初の音が次ぎの音を引き出してゆくわ 転がっていくってところかしら 音がポロポロとこぼれてゆくの それだけだわ 私は黙ってそこにいて指が動くに任せているだけ 私はただそこにいるだけだわ) 終にそのふっくらとした華奢な指先が動きを止めた時 (弾くのを止めたのか それともブレイクなのか どう考えたって判然としません) 彼女の艶やかな黒い瞳は前方を見凝めているようですが 実は何を眺めている訳でもありません 目蓋が開いていれば眼差は何かのオブジェを映し出す (瞳はただそこにあるだけだわ) そんなP.S.がレイチェルの脳裡で呟かれている私語(囁き)です そして彼女は軽い茫然自失に襲われる 彼女の唇から発せられる言葉が果たしてどこへ向っているのか 不意に解らなくなってしまうからです つい今仕方までの思考や感覚の脈絡から 一瞬 不可知の外界へ図らずも放り出されてしまうからです 始まりも終りも物事の経緯(いきさつ)も 皆目見当がつかなくなってしまうからです なんだか何層倍もの重力圏に踏み込んだかのように まわり中のあらゆるものが空白のスペースだけを残して崩れ落ち 彼女自身がヘリウムより軽い微粒子と化して 大気圏に雲散霧消してしまうのでした (私はただそこにいるだけだわ) これが大気圏の内奥で密かに囁かれているP.P.S.です みだれかがやく虚無の沈黙(しじま)に 1 ふいに私が振り向いた時 空気がなんだかぎらっと光ったのでした そうして先程まで遠方に見えていたはずのコバルト山系が 突如あまりに間近に接近したのです するともうそこにはリュシオンとかエンディミニュオンとかいう 未知なる彼等の気配がして 私は俄かに荒野のそぞろ歩きを愉しんでいる最中なのでした ハレルヤ ハレルヤ! みだれかがやく虚無の沈黙に 2 河原に立っていた時でした 視界の隅になにか見慣れない景色の気配を感じて くるりとそちら側へ顔を向けたのです しかしやっぱり河原はさっきからの同じ草の波濤で 風が涼しく吹いているばかりです 黄色い花に目をやった時 またそのなにか見慣れないものが私の関心を惹きました よく見究めようと近づくと またしてもその不思議な気配は遠退くのでした そうして暫くそんなことを続けていましたが どうしてもそのなにかは一向に姿を現そうとはしません 河原はどこまでいってもごく普通の草叢で 風と光の戯れでした それなのに私の脳裡になのか 身体の隅々になのか その見慣れない気配はすでに浸透していたのです |
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