喧騒精神物語(ノイジー・マインド・ストーリー)


ああ 弾丸のようなのです
あなたを構成している粒子の群れは
色とりどりに入り乱れ踊り狂っているのです
あなたという架空の結晶体を巡って...
私はそれを実際に観察したのではありません
ただ そんなふうに感じているだけなのですが
(本当に近頃の私ときたら明瞭に解ることなどありやしない
 こんなに寄る辺のない事象の渚で
 私には理解できることが殆どありません)
それでも極彩色の小さな粒がめまぐるしく飛び交っているようなのは
そんなに当てずっぽうなことではない
それは物凄い勢いでびゅんびゅん駆け巡り
愚図愚図していると私などは吹き飛ばされてしまう
   ちかちか光る蛍光色のとりとめもないお喋りです
一体全体この人達は何を喋っているのでしょう?
どうも必死で喚いている割にはあたりの空気を震わせるでもなく
サイレントムービーのアクター宜しく
身振り手振りも大袈裟で少々滑稽味を帯びている...
などと言ったら明らかに反感を買うでしょうが
そんなに彼等は純心でそして大層情熱的です
きっとその真剣さと情熱が彼等の精神を弾丸にする
彼等の細胞を擾乱する!
   賑やかな地上のピンク・ノイズです
勢い余ってあらぬ方へと飛び散ってしまう者もある
(これは失敬)
という訳で
もうお互いに混じり合い カオスと化してしまっている
   人それぞれの境界線もうつろ
   華やかな地上の御乱交パーティーの真最中
(いや そこの微粒子は私の所属です)
(はい これですね どうぞお取りください
 然しどうもそちらの思惑と言えば本来私に芽生えたものでして)
(御免なさい うっかりしておりました
 それでは返却致します 有難う)
   おもいはちぢにみだれ...という訳

さて その艶やかにお化粧をほどこした煌めく粒子は
また等しく私を形成しているエレメント要素でもある
それなのに私が彼等の疾駆にあやうく吹き飛ばされそうになり
また彼等に出合う度に軽い眩暈すら感じるのは
私という仮説の中で蠢く粒子の運動量が
彼等のものよりほんの僅かに小さいというだけのこと
相対的な速度の違いに過ぎません
   猛烈な裸のスピードラリーで失神しかけたホワイト・ノイズ
   昏倒しているバイオレット・ノイズや
   恍惚り微笑むゴールデン・ノイズ...
私もまた休むことなくひたすら揺らいでいるのです
(我々はひっきりなしに乱舞する!)
(何時まで?)
(さあてね)
そんなややこしいことを訊いたって解りやしません
この人達は未知なる邦からの訪問者なのだから
(では 私の意識が朦朧としていて理解の程も曖昧だという事実は
 私が或る日どこからか降って来た異星の客だということの証拠でしょうか?)
(まあ そのへん)
(成程 私は謎のメテオスですね)
(ある確かな情報筋に拠りますと
 あなたが私と呼ぶものはそのちかちかぴかぴかの集大成だそうですよ)
(はあ...
 時に訪問者と名乗るからには何か目的がお有りでしょうか?)
(それが屯と合点がいかないのです)
(でも何か仮初の目的くらいは有っても宜しいのじゃありませんか?)
(ええ どうやらそれが...)
(では さしたる当てもなくただふらふらと)
(まあ さしずめ暇潰しの風来坊といったところですかな
 ただぶらりとお邪魔などしている次第で)
(何か素晴らしいアイデアとか夢をもたらすために来たのではないと)
(どう致しまして お生憎様
 それにこの人達自身でさえ何処より来たりて何処へ行くのか
 ちっとも解らないそうですよ
 ですからあまり手厳しくなさらないようにお願いします)
(でも然し あまりと言えばあんまりな)
(それよりか御覧なさい 彼等のはしゃぎよう
 こんなに生気に満ちあふれているのですから
 多少の不手際は大目にみてやろうじゃありませんか)
   私達はアメーバの如く繁殖してゆく絶え間ない思考の連なりです
   それも殆ど脈絡がありません
やれやれ...
それにしても困ったものです
この眩暈と訣別するにはどうしたらいいのでしょう?
どうもこの彼等ときたら
私という小さなゴム毬の表面あたりでわいわいぺちゃくちゃやっていて
それに意識の焦点を合わせた途端にくらくらとしてしまうのです
(瞳を閉じて御覧なさい そうして静かに聴くのです
 あなたと彼等の間には隔たりなんか無いことを)
(え?)
(そうです
 あなたと彼等とはもうそもそもの初めから一つのうみ大海に浸っていると
 想像をして御覧なさい いいえ 感じて御覧なさい
 それは深い翡翠色をしています
 さあ 思い切ってそこに溶けるのです)
   ぷくぷくぷく...

ああ それにしてもこんなに寄る辺のない半意識の渚で
私には理解できることが殆どありません
(おお 可哀想 お気の毒
 ほうら 私はこんなに博識だ)
(と信じて疑わないだけでしょう?
 あなた方の足元だって盛んに地滑りして止みませんよ)
(否 その様なことは断じて御座いませぬ
 理路整然とした我々の話を拝聴し給え)
(強引に辻褄合わせをするんだな)
(誓って!そのようなていたらくでは有りませぬ)
(私は構わないのです
 あなたが御存知だろうと無かろうと 鉄砲玉であろうと無かろうと)
(なりません 私の沽券に係わります)
   ぶつぶつぶつ...
不可ない不可ない 彼等のプライドの高さは経験済みのはずなのに
それに私にとってこの人達が弾丸であろうと無かろうと
本当にどちらでも構わない
(いいえ 構います 構います)
やれやれ...
彼等は全く頑固な存在です
それでも私はそんな彼等と一緒に宇宙のメリーゴーランド回転木馬の如く
こんなにまばゆい銀河の中で半永久的に巡り続けても
それで一向に構いません
そしてやっぱり私には確かに理解できることなど殆ど無いのです












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